愛しい女とのカッコイイ別れ方

25日(木曜日夜)
自宅でヨガの先生からお借りした『つみきのいえ』を見る。
哀しい物語なのか,心暖まる物語なのか... 世代,人生経験によって見方が分かれる(どんな物語もそうなのだけれど)のが面白かった。

つみきのいえ (pieces of love Vol.1) [DVD]

つみきのいえ (pieces of love Vol.1) [DVD]

24日(金曜日)

卒論演習
小津安二郎の『晩春』について話し合う...
ラストシーン近く,紀子(=原節子)の結婚前に彼女と父親(=笠智衆)が京都に旅行に出かける。最後の晩,紀子が「お父さんのそばにいさせて」と懇願するが,父親は彼女を説き伏せ,あくまで嫁がせようとする。一応説得に成功した後で,彼は一人で林檎の皮を剥く。
とある女子学生が,この場面に性的なニュアンスを感じたと発言。中々面白い指摘だなと思って聴いていたら,他の学生が... とても興味深いエピソードを教えてくれた。
彼曰く,この場面,シナリオでは笠智衆が号泣するはずだったのだが,シナリオや小津の注文にはとても忠実な笠智衆が,小津に「どうしてもこの場面は演じられない」と言ったせいで,号泣シーンが急遽林檎の皮むきシーンに変わったとのこと。最後に「先生,このエピソードは有名なんですよ!」とも付け加えてくれた。老師の勉強不足が不満なのだろう。
また,「どうしても小津映画の結婚観について行けない」という発言も聞かれた。その場では,一応,自分たちとは価値観,世界観と違う他者に出会えるのが映画の醍醐味なのだよと,答えたのだけれど...
実は,かく言う私自身が現在のというか,自信の結婚観,恋愛観を引きずりすぎて小津の映画を見てきたのではないだろうか...
当時,配偶者というかパートナーというか,相方を選ぶドミナントな基準はハッキリした<恋愛>感情ではなくて,何となくこの人となら大過なく人生やって行けそう,家庭が持てそうといった,漠然とした<予感>ではなかった。
だから,小津映画で繰り広げられる結婚相手選びから結婚にいたるプロセスは,たしかに私たちから見ると<?>と思えても,当時の観客にはそれなりの説得力(=真実らしさ)があったのではないだろうか。だって,あの結婚観で普通のお客からちゃんと入場料が取れていたのだから!
まさしく,「人の振り見て我が振り直せ」... です。

初級フランス語
夏休み前最後の授業なので...
試験の説明と...
毎年繰り返していることだけれど... サラリーマンのようにフランス語を勉強したら,つまり1日8時間フランス語を勉強(主に読んだら)したら,しかもそれをたった2週間続けたら君たちのフランス語力は飛躍的に延びるだろう。そしてそのプロセスで感じたこと,結果として身につけた外国語の理解力は一生の宝物になるだろうというお話で締めくくる。
この話に引っかかった学生が今の4年一人いるようだけれど(私の教歴の仲では唯一の学生)... さて今年はどうなるか?

社会人講座...
既にこのサイトでは紹介済みと思うのですが...
振られる男を歌えば並ぶもののいない,ジャック・ブレル(Jacques BREL)のマドレーヌを聞いて頂く

ベスト・オブ・ジャック・ブレル

ベスト・オブ・ジャック・ブレル

25日
野暮用で,ダイエーへ。玩具売り場で用を済ませて,駐車場に向かう途中,食器の安売り場で,長年恩師のイベントのスポンサーになっているT-falの圧力鍋が眼に入る。以前からリクエストされていたので,一瞬恩師の顔を思い浮かべながら衝動買い。すると恩師から用もないのに電話。お互いの近況を伝えあう。不思議。まあ,人と人との繋がりってこんなもんである。
今年初めてのプール(寒かった)。
夜は... 野球観戦。松中のホームラン,どちらも素晴らしかった。

26日
ええっとこの日は~~
そうそう!
久しぶりに料理らしい料理を致しました!
牛バラのビール煮込み(圧力鍋を使ってみたかったので)。
あっという間に,タマネギ2個がビールに溶けて,グラム300円程度(カレー用牛肉という奴です)の肉がこんなに柔らかくなるなんて!信じられません!
味は... 控えめにコメントすると... 学生時代にパリの学食でよく出ていたブッフ・ブールギニヨンよりは美味しかったかな?
....
それと... 料理しながら初めて日本語吹き替えで(一部のオーディエンスはまだ字幕が読めないので)『ローマの休日』を見た。
英語では何回目なのかは覚えていないけれど...
頭の中では... ダンスパーティーの後,アン王女(オードリー・ヘップバーン,美しい!!!)と記者(グレゴリー・ペック,いい人,古き良きアメリカでございます)は一夜を過ごすことになっていたのですが... そのまま別れるのですね!記憶とは恐ろしいものだ,見たいものを勝手に作っちゃうんだから!
とはいえ,面白い映画だった。
この映画が「アンの成長の物語」として見られうることに初めて気づきました。
そして,最後の場面でグレゴリー・ペックに漂う,寂寥感!
...
つみきのいえ』,『晩春』そして『ローマの休日』と,いずれも自分が選んで見た作品ではありません。この3つの作品に<これ!>といった共通点もないとはおもうのだけれど。何故かいずれの作品も,<最愛の女性がいなくなってしまった後に残された男性の孤独>を前景化したシーンで終っているのが印象的です(たとえ<『晩春』と『ローマの休日』では男性側が別れを準備+細工したにせよ)。
健さんにしろ,ペックにしろ<女性への愛情にみちた別れ方>ができる男って,かっこいいですね。

超字幕/ローマの休日 (キャンペーン版)

超字幕/ローマの休日 (キャンペーン版)