立ち読みが日本の活字文化を救う!... かもしれない...

昨日,旅先ですこし時間があったので,久しぶりに大型書店のマンガ売り場に行った...
当たり前のことだけれど,最近の書店ではすべてのマンガにビニール包装がしてある。
立ち読み防止のためなのだろう。
確かに,どの本屋に足を踏み入れても,たしかに昔に比べて子供の数が少ない。
特に,渋谷や新宿の大型書店の参考書売り場に行くと... 小学生,中学生向けの参考書の所には大人で溢れかえっている(参考書,問題集は子供に選ばせた方がいいと思うけれど...)。
脱線しましたが,マンガの話でした。
マンガ売り場にも当然子供の姿はほとんどない。
子供のいないマンガ売り場なんて... 私からすると想像できないので,とてもこの光景にはショックを受けた。
小中学生のころ,夏休みになると,時間を持て余すことが多かった私は,その持て余した時間の多くを書店で過ごしたと思う...

で,色んなマンガを読みました。
タイトルがかろうじて思い出せるだけでも... 『巨人の星』『あしたのジョー』『おれは鉄平』『つりキチ三平』『キャプテン』『プレイボール』『タッチ』『ドカベン』『ブラック・ジャック』『侍ジャイアンツ』『コマワリ君』『愛と誠』等々。
でずっと立ち読みするわけにもいかないので(青い制服を着て,眼鏡をかけた女性店員が時々廻ってくるので)もないので,合間に参考書売り場を覗いたり,文庫本売り場を覗いたりしていた。
それに涼しかったし(実家にはクーラーがなかった),インクの匂いが好きだったし,時々学校の友だちにも会えて... 田舎の貧しい子供たちにとって,町の本屋って社交場だったわけです。
確かに,時々大人用のマンガに引っかかって,子供が読むにはちょっと時期尚早の性描写があったりするモノも読んだしまって気もします。
でも,色んなマンガが読めたわけだし,文庫本売り場で色んな作家の名前は覚えたし,『ユリイカ』や『現代思想』なんて雑誌のタイトルも知れたわけです。
私の<一般教養>のほぼ全ては子供の時に立ち読みのために足しげく通わせて頂いた2〜3軒の本屋(一応ローテーションのようなものがあった)のおかげだと思います。

確かにね,この2〜3軒の本屋にとっては私のような貧乏なクソガキ,バカガキは本当にいい迷惑だった思います。ただ,高校生になったら,そこで参考書を買ったり,文庫本買ったり+注文したりしたわけで,私としては出来る範囲で<お返し>をしたつもりです。
そう,本屋というのは面白い所で,色んな年齢性,社会階層,教養によって利用の仕方が違ってくる!
今日の<商売の邪魔>が明日には<お得意様>になるのが,肉屋や魚と違った本屋という商売の面白いところだ(ところが,多くの本屋,出版社はその基本的なことに全く気がついていない!)。

ところが,最近はあのビニール包装のせいで,子供たちは立ち読みも出来ない。ビニールのせいで子供たちが本屋で過ごす時間がぐっと減ってしまった(と思う)。

出版社は,著作権の保護には熱心だしとか,競合する(と出版社が判断している)施設(図書館やブック・オフ)への警戒心はあからさまに示す。ビニール包装も立ち読みを防ぐために出版社が本屋への出荷の段階で出版社がしているのだろう。そのくせ,肝心の<読者の掘り起こし>という点では新しい試みに欠けている気がする。
というか,パソコンで簡単に本が買える今だからこそ,<本屋に人を呼び戻す>戦略が必要なんだと思う。そして,店に来た人に本屋にどんな本があるのかを知ってもらうことから始めるべきではないだろうか。
ご存知のように,本屋はまともに宣伝さえしない。電気屋,肉屋,服屋,魚屋,大抵の店はチラシを新聞にいれるけれど,本屋はそのような営業努力さえしない。
それで,<本屋で本を買え>というのは,あまりに虫がよすぎるだろう!!

せめて夏休みだけでもいい,小中学生が読んでもいいマンガ,読むべきマンガだけはビニールをはずそう(そうしておけば,大人も安心して子供に立ち読みしてもらえる)。
致命的なまでに本離れが進んでいる(残念ながら私の勤務先ではそうだ)を食い止めるためにも,まず子供を本屋に呼び戻すことが緊急の課題だ。
本屋の皆さん,日本の文化の復興は皆さんの英断にかかっています!マンガ本からビニール包装をはずしましょう!
これが,今の出版+書籍販売業界が出来るもっとも安価で効果的な宣伝(本屋に人を呼び戻す)+投資(あすの読者を育てる)だと思うのですが!?
いかがでしょう?